立川せんせいの自由帳

動物博士の手

うちの院には動物博士がいる。

彼女はまだまだ勉強中ではあるが、

わたしにとっては、知らないことをたくさん教えてくれる動物の先生であり、もはやここまでくると博士だ。

彼女は、本当に動物のいろんなことをしっている。

彼女の学校には、たくさんの動物がいるらしい。しかも、それぞれに面白いネーミングがついているらしく

聞いているだけで面白い。

どっからそんなネーミングがきたんだ?と、聞いているだけでわくわくする。

本当にたくさんの種類の、たくさんの動物たちがいるらしい。

彼女は、そこにいる動物一人一人の名前はもちろん、動物ごとの習性、身体の状態、ご飯の種類、与え方、その動物が何が好きで何が苦手で、どうしてあげたら生きやすいのかを、常に考え、全て把握している。

そう。

もちろん、把握しているのだ。

けして容易では無いはずなのに、

彼女の中ではそれくらいは当然、と言わんばかりに、

もちろん、なのだ。

彼女の徹底ぶりは、本当にすごい。

あと言い忘れないように言っておくが、彼女には愛する推し様がいらっしゃる。

これまたイケメンだ。

しかも歌まで歌えるイケメンだ。ゲームもできるらしい。羨ましい。

そして彼女の徹底ぶりは、この推し活にも、もちろん、活かされている。

缶バッチを綺麗に敷き詰めたこれでもかと愛の詰まった手作りのバック(すごい重量らしい)、推しの方のイベントの時のパネル作りのための絵師さんとの緻密な打ち合わせも、そつなくこなし、絵師さんに依頼する時の細部までこだわったラフ案まで描ける。

すごいんだ。

わたしの語彙力ではちっとも伝わってない気がするが、

とにかく、すごいんだ。徹底ぶりが。

何がすごいかって、その熱量だ。

そんなこんな彼女のすごいところをあげてみたが、実は彼女自身、長い間悩んで苦しんでる時期があった。

彼女を悩ませたのは、意外に思われるかもしれないが、

あの徹底的なこだわりにも現れている、

『完璧主義と責任感の強さ』だ。

しかし、私は思う。

彼女を今の道に導いてくれたのもまた、

それ、で、

きっと彼女にこれから訪れるであろう、ありとあらゆるものから救ってくれるのも、きっと

それ、なのだ。と。

彼女がプライドをかけて大切に扱ってきた

その彼女自身の心に、

次は

彼女自身が救われる番だ。

大切に扱われる番だ。

短所は見方を変えれば、長所にもなりうる。

傷はいつかあなたを守る強いかさぶたになり、あなたの大事な人を助ける特効薬にもなる。

本人にとっては欠点に思えても、

はたからみたら、それが魅力的にも見えたりもする。

大切なのは、大切に扱うことだと思う。

乱暴に扱わず、大切に大切に扱う。

丁寧に磨きをかければ、

砂でさえ光るんだ。

公園や運動場で光る泥団子作ったことあるだろうか、

泥団子も、磨くと光るんだぜ。

嘘じゃない。

自然は、嘘なんかつかない。

身体も心も、嘘なんてつかない。

時間をかけて丁寧に丁寧に。

心を込めて、磨けば、

光るんだ。

ふと、昨日、彼女が院に来た時に思った。

前よりもずいぶん手がしっかりしてきた。

前は、触れるのも躊躇するくらい、か細くて、

血管が透けるほど真っ白だった。

今はうっすらいい感じに日に焼けた、綺麗に爪の整えられた働き者の手だ。勲章みたいに貼られた絆創膏が、これまたいい味出してる。

なんだか妙にしっかりしたように見えた。

それを伝えると、彼女は自分の手を見て、本当だー、と言った。

何気ない瞬間かもしれないが、

あの時の自分を誇らしく思ってる彼女の顔を、

私はきっと忘れないと思う。

まだまだこれからいろんなことがあると思うけど、

あなたはきっと大丈夫。だから、自分を信じて。

動物たちの命と同じように、あなたの身体も、あなたの心も一つしかないから、

どうか大切にしてね。

また私の知らないことをたくさんたくさん教えてね。